1. テト前=転職しない時期、は昔の話?
ベトナムでは毎年12月〜1月にかけて、
「Tết(旧正月)ボーナスをもらってから転職する」という考え方が一般的でした。
しかし、Jobfull Partnerが実施した最新アンケートでは、従来の常識を覆す結果が明らかになっております。
実はいま、多くのベトナム人が
・テト前でも転職活動を続けている
・ 常に市場をチェックしている
・ 良い求人があればすぐ動きたい
という姿勢に変化してきています。
今回の記事では、アンケート結果をもとに
「2025年、ベトナム人の“転職のタイミング”がどう変わっているのか」
を読み解きます。

2. アンケート内容と回答割合
アンケート質問:
“Sắp hết năm 2025 rồi, bạn đang ‘tính sổ’ công việc thế nào? Nhảy việc không?”
(2025年も終わりに近づいてきましたが、仕事の棚卸しをどうしていますか?転職しますか?)
回答の傾向(暫定):
| 選択肢 | 内容 | 割合(目安) |
|---|---|---|
| 1 | Có, đang miệt mài săn job mới(積極的に転職活動中) | 47.7% |
| 2 | Chờ thưởng Tết rồi tính(テトボーナス後に検討する予定) | 10.3% |
| 3 | Chỉ “ngó” thôi, ok thì nhảy(求人を見ているだけ、良い求人があれば転職) | 27.7% |
| 4 | Hài lòng với hiện tại(今の職場に満足している) | 14.3% |
3. 分析:テト前でも“動く人”が過半数という衝撃
(1)積極的に転職活動中(47.7%)が最多
最も多かったのは、現在積極的に転職活動をしている人(47.7%)。
これは「テト前は動かない」という従来の常識と大きく異なります。
背景としては、これまでの目先の利益を優先という傾向から、「長期的な良い環境」への意識が、
ベトナム人の中でも高まりつつあるようです。
(2)“良い求人があれば転職する”層(27.7%)の増加も重要
この層は、
Chỉ “ngó” thôi, ok thì nhảy
(求人を見ているだけ、良い求人があれば転職)
というライトな転職活動者の層。
テトボーナスに左右されず、
「自分に合う環境があればすぐ動く」
「年末でも求人に応募する機会がある」
という柔軟な価値観が広がっています。
そして企業にとってこの層は、最も獲得したい「潜在層(Passive Candidates)」 にあたります。
なぜなら、
📌 スキルが高い人ほど「良い求人だけ応募する」傾向が強い
📌 他社より早く気づいた企業が先に声をかけられる
📌 採用優位性を作れるのは“情報収集段階”のこの層
だからこそ企業は、
この27%の層を逃さないように継続的に採用活動を行うことが重要です。
テト前の静かな採用市場は、
実は“この層に先にアプローチできる絶好のチャンス”でもあります。

(3)テトボーナスまで待つ層は、わずか10.3%に減少
以前は最も多かった「テトボーナスをもらってから転職する」層ですが、
現在は全体の10.3% に留まる結果となりました。
この減少の背景には、従来の働き方とは異なる変化が起きています。
① テトボーナスという“年1回の慣習”が薄れつつある
最近では、ボーナス制度が「テト前一択」から「企業ごとの業績賞与」へと多様化しています。
特に日系企業では、
日本本社に合わせて年2回ボーナス支給
テトとは別のタイミングで賞与が出るケース
などが増えており、
“テト前に辞めないほうが得”というロジックが弱くなりつつあります。
その結果、「ボーナスの支給時期」を理由に転職を控える必要性が減ってきているようです。
② ボーナス満足度の低下
一部の業界では、業績の変動や物価上昇の影響で ボーナス額が期待より少ない と感じる傾向が増加。
また、基本給が上がってきていることから、ボーナスに依存する傾向が減っているようです。
そのため、「もらってから辞める」という動機が弱まり、テト前に動くリスクが以前より低いと見られています。
③ 若手を中心に“長期的なベネフィット”を優先する文化へ
特に20〜30代前半の層では、
職場環境
キャリア成長
ワークライフバランス
日本語・技能が活かせるか
といった 長期的なメリット を優先する傾向が強まっています。
これは「目先のボーナスより、より良い環境で働きたい」という価値観の変化とも言えます。
(4)現職場に満足している人はわずか14.7%
今回のアンケートでは、「今の職場に満足しており、転職するつもりはない」
と回答した層は わずか14% でした。
この数字が示すのは、現状転職しないと確信している層はごく少数という事実です。
つまり、
「優秀な人材が辞めないだろう」
「満足しているから安心」
と企業側が考えるのは、とても危険です。
ベトナムでは依然として「常に離職リスクが存在する市場」であることに変わりはありません。

4. 企業側に起きている“最大の見落とし”とは?
企業はよく、「テト後まで応募者は増えない」と考えて、採用活動を一時停止しがちです。
しかし実際には、
・ 求職者の過半数(47%)が積極的に活動
・ さらに27%は良い求人があれば応募
・ 合計約75%が「動く可能性あり」
つまり、企業が休んでいる間に、求職者は動いている のです。
採用市場では、動き続ける企業ほど優秀な人材と出会いやすいという状況が生まれています。
5. 求職者の変化を踏まえた、企業が取るべきアクション
(1)テト前も採用活動を止めない
優秀層はよいタイミングで動き、
企業側の“採用の穴”になりやすい時期です。
(2)「ライト応募」層を意識した求人設計
年末は応募のハードルを下げると効果が出やすいです。
例:1回面接、オンライン面接OK、書類選考スピードUP
(3)SNS・求人媒体で「常に見られる状態」をキープ
求職者側は常時チェックしています。
特に日本語話者は情報収集能力が高い傾向あり。
(4)面接対応のスピード強化
「良い求人なら転職する」層は、レスポンスの速い企業に魅力を感じます。
6. まとめ:テト前は採用のボーナスタイム
今回のアンケートからわかったのは、
ベトナムの転職市場は「常時可動」状態になりつつあるということです。
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テト前でも積極的に動く人が増加
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「良ければ転職」という柔軟な価値観
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ボーナスよりキャリア優先の層が増加
📌 企業にとっては、年末こそ競合が少なく採用チャンスの大きい時期
📌 求職者の動きに合わせた“前倒し採用戦略”が鍵
Jobfull Partnerでは、求職者動向レポート、日本語話者・専門職の候補者紹介
年末〜テト明け採用のプランニングなどをサポートしています。
年末の採用戦略に課題がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。