ベトナムで採用活動をしていると、必ずと言っていいほど悩むのが
「日本語ができる人材を優先すべきか、英語力で選ぶべきか」という問いです。
結論から言うと、どちらが正解かはポジションと業務内容によって異なります。
この記事では、現場でよく見るポジション別に「どちらを優先すべきか」の判断軸を整理します。

まず前提として:なぜこの選択が難しいのか
日本語人材と英語人材、それぞれに強みと限界があります。
日本語人材の強み
– 日本人上司・本社とのコミュニケーションがスムーズ
– 日本のビジネス文化(報連相、丁寧な対応)への理解が高い
– 顧客が日系企業の場合、直接対応できる
英語人材の強み
– グローバルな業務やマルチナショナルな環境に対応できる
– 日本語人材より母数が圧倒的に多く、採用しやすい
– 給与水準が日本語人材より低い傾向がある(業種による)
日本語ビジネスレベルのベトナム人は希少です。そのぶん給与への期待も高く、採用難易度も上がります。
だからこそ「本当に日本語が必要なのか」を一度立ち止まって考えることが、採用の成功率を上げます。
ポジション別 判断の目安
営業・カスタマーサポート(対日本人顧客)
→ 日本語人材を優先
顧客が日本人、もしくは日系企業の担当者である場合、日本語力は必須に近いです。
言語だけでなく「日本式の気遣い」ができるかどうかが、顧客満足度に直結します。
特に電話・メール対応では、ニュアンスの伝わり方が信頼に関わります。
バックオフィス・経理・総務
→ 業務内容による。英語でも十分なケースが多い
日次業務がベトナム語・英語で完結し、日本語が必要なのは月次の本社報告のみ、という企業は少なくありません。
その場合、日本語よりも「数字に強く、正確に業務をこなせる人材」を英語ベースで採用し、報告資料の翻訳サポートを別途用意する方が現実的です。
エンジニア・開発職
→ 英語人材を優先
技術ドキュメントは英語が基本です。日本語力よりも技術スキルと英語読解力を重視した方が、採用の選択肢が広がります。
日本語ができる優秀なエンジニアは非常に少なく、給与水準も高め。
「日本語は必須ではないがあれば加点」くらいの設定が現実的です。
マネージャー・リーダー職
→ 英語+日本語の両方が理想だが、英語を最低ラインに
ベトナム人リーダーが日本人上司と直接やりとりする機会が増える場合、日本語があると信頼関係が築きやすいです。
ただし、優秀なマネジメント人材を「日本語必須」で絞ると母数が激減します。
英語での業務遂行能力を担保しつつ、日本語は「あれば歓迎」にとどめることをおすすめします。

「日本語ができる」の定義、合っていますか?
採用要件に「日本語能力必須」と書くとき、そのレベル感は人によってバラバラです。
面接官がイメージしている「日本語ができる」と、候補者が自己申告する「日本語ができる」がずれていて、入社後にトラブルになるケースは珍しくありません。
JLPT(日本語能力試験)を一つの目安にすると、以下のように整理できます。
N5・N4(初級)
日常の簡単なあいさつや基本的な単語は理解できるレベル。ビジネスでの使用はほぼ不可。
「日本語に興味がある」程度として捉えましょう。
N3(中級)
日常会話はある程度できますが、敬語や複雑な書き言葉は難しい。
社内の簡単な連絡や雑談レベルなら対応できますが、顧客対応や公式文書には向きません。
N2(上級)
ビジネス日本語の入り口。メールのやりとり、会議での発言、報告書の読み書きがおおむねできます。
日系企業での実務に必要な最低ラインとしてよく使われるのがこのレベルです。
N1(最上級)
ネイティブに近い運用力。細かいニュアンスや敬語表現も自然に使えます。
顧客対応や交渉、経営層との折衝など高度なコミュニケーションが求められるポジションに適しています。
注意したいのは、JLPTはあくまで「読む・聞く」のペーパー試験であり、「話す・書く」の能力は別途確認が必要という点です。
N2保持者でも会話が苦手なケース、逆に資格はないが日本での就業経験があり流暢に話せるケースもあります。
採用時には実際のロールプレイや課題メール作成など、実務に近い形での確認をおすすめします。
また、ベトナムでは日本語学習者が増えている一方、ビジネスレベル(N2以上)の人材はまだ限られています。
求人票に「N2以上必須」と入れるだけで、応募者数が大幅に絞られることを念頭に置いておきましょう。

採用前に確認したい3つの問い
判断に迷ったときは、以下を社内で確認してみてください。
1. 「日本語が必要な場面」は1日・1週間のうちどれくらいあるか?
月に数回の本社報告だけなら、日本語を求める必要はありません。
2. 日本語ができない場合、代替手段はあるか?
翻訳ツール・バイリンガルの橋渡し役・日本語堪能な別メンバーの存在など、補完できる環境があれば要件を下げられます。
3. 日本語スキルに見合った給与・ポジションを用意できるか?
日本語人材を採用しても、スキルに見合った役割を与えられないと早期離職につながります。
まとめ
「日本語 vs 英語」の問いに正解はありません。
ただ、「なんとなく日本語があった方が安心」という理由だけで要件を設定してしまうと、採用難易度が上がり、候補者の幅も狭まります。
ポジションごとに「誰と、何のためにコミュニケーションするのか」を整理することが、最適な人材要件づくりの第一歩です。
採用要件の設計でお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
貴社のポジションに合わせた要件整理をお手伝いします。